IPCC第5次統合報告書が公表されました

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」(注1)の第40回総会が10月27日~31日、デンマークの首都コペンハーゲンで開催され、IPCC第5次統合報告書が公表されました。統合報告書は、12月1日からペルーの首都リマで開催される気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)(12月1日~12日)への報告をはじめとして、今後の地球温暖化対策のための様々な議論に科学的根拠を与える重要な資料となります。

以下にその要約を紹介します。

1.観測された変化及びその要因
 ・気候システムの温暖化には疑う余地がなく、また1950年代以降、観測された変化の多くは数十年から数千年間にわたり前例のな
  いものである。大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇している。
 ・人間の活動による温室効果ガスの排出は、産業革命以降増加しており、主に経済成長や人口増加からもたらされている。今や
  その排出量は史上最高となっており、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の大気中濃度は、少なくとも過去80万年で前例の
  ない水準に達している。20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な原因であった可能性は極めて高い。
 ・1950年頃以降、極端な低温の減少、極端な高温の増加、極端な海面水位の増加、強い降水現象の回数の増加が観測された。
  これらの変化の中には、人為的影響と関連しているものもある。

2.将来の気候変動、リスク及び影響
 ・二酸化炭素の累積排出量によって、21世紀後半以降の温暖化の大部分が決定づけられる。温室効果ガス排出量の予測は、社会
  経済的発展と気候政策に依存する。
 ・評価した全ての排出シナリオにおいて、今世紀中は気温が上昇すると予測されている。多くの地域で、熱波はより頻繁に発生
  し、またより長く続き、極端な降水がより強く、また頻繁となる可能性が非常に高い。
 ・海洋では温暖化と酸性化、海面の水位の上昇が続く。
 ・気候変動の多くの特徴と関連する影響は、たとえ温室効果ガスの人為的な排出が停止したとしても、何世紀にもわたって持続
  する。

3.適応及び緩和(注2)、持続可能な開発に向けた将来経路
 ・適応は気候変動影響のリスクを低減できるが、特に気候変動の程度がより大きく、速度がより速い場合には、その有効性には
  限界がある。
 ・現行を上回る追加的な緩和努力がないと、たとえ適応があったとしても、今世紀末までの温暖化は、深刻で広範にわたる不可
  逆的な世界規模の影響をもたらすリスクが「高い」レベルから「非常に高い」レベルに達するだろう。
 ・気温の上昇を2℃未満に抑制する可能性の高い緩和策は複数ある。このシナリオの場合では、温室効果ガスの排出を2050年は2010年
  比40~70%減、今世紀末までにはゼロ又はそれ以下にする必要がある。

4.適応及び緩和
 ・多くの適応及び緩和の対策は気候変動への対処に役立ちうるが、単一の対策だけで十分というものではない。
・適応策はすべての分野に存在するが、実施の状況や気候関連のリスクを低減する潜在性は分野や地域で異なる。
 ・緩和策は、各主要部門で利用できる。費用対効果の高い対策は、エネルギーの使用削減や使用効率の改善、エネルギー供給の低
  炭素化、森林等の吸収源の強化などの対策を組み合わせる統合的な取り組みによる。

12月1日から開催されるCOP20では、2020年以降の温室効果ガス削減の新たな国際枠組みの草案を起草し、来年12月パリで開催されるCOP21での合意をめざすことにしています。2020年以降の枠組み、またCOP21に向けて、COP20でどんな議論が行われるのか注目して行きたいと思います。


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